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62ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
ちゃばしら
「大切な話があると聞いていたが……私をからかっているのか? 茶柱先生」
「ましま
そんなことはないだろうと思いつつも、真嶋が茶柱に説明を求める。
いつしゅう
あやのこうじ
はしのみや
「からかったつもりはない。私が星乃宮先生のような無意味なことをするとでも?」
「それはそうだが、この状況に全く理解を示すことが出来ん。今は謝恩会の最中だ」
本来は卒業生たちと最後の交流を行える貴重な時間。
子供の妄想話に耳を傾ける余裕はないと、一蹴しようとする。
「綾 小路は何をしようとしている」
「さあ。說明しようにも私からは不可能だ。昨日話したように、私も坂 柳理事長から指示
を受けてこの場を用意したに過ぎない。同じように理解できる説明を求めている」
両者から疑惑の目を向けられる。話を前進させてもらうとしよう。
「今現在、坂柳理事長の不正疑惑が持ち上がって謹慎していること、そして月城理事長代
行がこの学校にやってきた原因がオレにあると言ったら、真嶋先生はどうお考えになりま
すか?」
「なに?」
本題に触れるも、簡単には状況は進展しない。
それどころか真嶋先生のこちらに対する疑惑は深まっていく。
「全く理解できない話だ。綾小路に原因があるとは?」
当然、そういう反応になるだろう。
学校の仕組みそのものが個人の在学退学に振り回されているとは頭の片隅にすらない。
きんしん
63ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
さかやなぎ
ましま
やはり、まずは学年末試験の内容に触れていくべきか。
「経緯からご説明します―」
オレが学年末試験のことに触れようとした時、坂柳の手が上がった。
「僭越ながら、全てお話ししても構わないのなら私から切り出させていただけませんか」
この状況を予期していたかのように、坂柳がそう申し出る。
「おまえも事情を知っていると言っていたな坂柳」
「ええ。少なくとも先生方よりは詳しいと自負しております」
早速坂柳が動いた。当人から話すよりも、事情を知る人物からの発言の方が周囲の理解
が早いと踏んだのかもしれない。オレが軽く頷くと坂柳は真嶋先生へと視線を移す。
「それは坂柳理事長に事情を聞いた、ということか?」
「いいえ。私が個人的に知っているだけのこと。綾 小路くんとはそうですね、分か
りやすく言えば幼馴染のような関係ですので」
楽しそうにそう説明する坂柳。そんな言い方でどうなるものかと思ったが、教師たちに
・ とっては意外と驚く表現だったようだ。
「幼馴染……まさかそんな関係だったとはな」
その事実を口にする茶柱に、坂柳は補足する。
文 「あくまでも『のような』関係ですが。ともかく、一度ご説明しましょう」
あやのこうじ
64ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
一度幼馴染の話を区切ると坂柳が説明を始める。
「先日行われた学年末試験。私と綾小路くんが司令塔として戦ったことは記憶に新しいと
思います。そして最後のチェスで私が勝ったことによって勝敗が決したことになっていま
それが学校の知る結果、真実。
「それがどうかしたのか」
当然、そのことを真嶋先生も茶柱も疑っていない。
「もしもあの時の勝負に横やりが入っていたとしたら? そして、それが原因で勝
敗が変わってしまい、結果に大きな影響を与えてしまっていたとしたら? 非常に大問題
だと思いませんか?」
「試験は厳正に行われている。問題になりようもない」
「それは何をもって厳正だと言えるのでしょう。お二人ともあの試験では不在でしたよ
ね?」
を自分たちの受け持つクラスから担当教師は除外されることになっていたため、ここにい
瑞る茶柱と真嶋先生は一之瀬のクラスと龍 園のクラスを担当していた。つまり試験は見てい
いちのせ
りゅうえん
65ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
ない。
「本来なら、チェスによる勝負は私が負けていました。綾小路くんの勝ちだったんです
よー
ちゃばしら」
さかやなぎ
つきしろ」
「ほしのみや
「チェスが綾小路の勝ち? いやだが、私は結果を見た。もちろんその過程もだ」
その話に真っ先に食いついたのは、真嶋先生ではなく茶柱だった。
チェスでの敗北で再びDクラスに転落したのだから、気になっても無理はない。
「まだ分かりませんか?」
そんな教師陣を試すような言い方で、坂柳は真嶋先生と茶柱に問う。
「何を言っている。まさか月城理事長代行がチェスの結果をひっくり返したとでも? 坂
上先生と星乃宮先生とも試験後に会議を行ったが、何一つ問題点は指摘されていない」
「結果をひっくり返したのではなく、過程を変えたんです。常識の枠に囚われていては真
実は見えてきません。司令塔の送った指示は直接生徒には届かず、一度学校側に審査され
てから後、インカムを通じて知らされる仕組み。不正を防ぐ意味では理にかなったシステ
ムですが、逆に言えば学校側による自由な改変も許される」
ここまで言えば分かりますか?と、坂柳は少しずつ2人に理解させていく。
真嶋先生が、そこで初めて月城理事長代行と試験についてのある疑問符を頭に過らせ
る。
66ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
「大がかりな設備を利用しての試験は、先生方にとっても異例だったはず。それもそのは
ずでしょう。アレは月城理事長代行が試験に不正介入するために急遽用意したものなので
きゅうきよ
おくそく」
ほりきた
坂柳は、嘘やハッタリも絶妙に織り交ぜている。
どこまで月城が計画したものであるか、その詳細は月城にしか分からない状況だから
だ。
事実確認をせず憶測で都合よく解釈して、あたかもそれが真実であるように話す。
その言葉に淀みはなく、教師たちには事実のように聞こえていることだろう。
しかも間髪入れず発言を続けるため、真嶋先生も茶柱も、情報過多で扱いきれないまま
坂柳の話は進んでいく。真実としていったん脳が処理を始めてしまう。
「彼が最後に入力した1手と、実際に堀北さんに届いた音声つまり機械によって読
み上げられた1手の内容は異なっていたということです。綾小路くんの考えた1手が採用
されていれば、負けていたのは私でした。この意味がご理解できますか?」
処理能力を試すように、坂柳は微笑む。
それくらいは分かりますよね?と強制的に答えを1つに絞り込ませて。
「月城理事長代行が――裏で手を回したと?」
「退学を目論むあの方にとって、綾小路くんの持つプロテクトポイントは邪魔ですから」
2人の教師が黙り込む。
しかし、すぐに真嶋先生は声を上げる。
坂柳の言ったことに間違いはないか、綾小路」
ほほえ
もくろ
67ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
そろうた
しんびょうせい
あやのこうじ
さかやなぎ、うそ
ましま」
しんびょうせい
「はい。合っています」
「両名が口を揃えて訴えていることには一定の信憑性があることは認めよう。俺も1年間
担任として坂柳の性格や考え方は理解してきているつもりだからな。仮にわざと綾小路
勝たせようとしていたのならチェス等も含め試験を適当に投げ出すだけで済んだ話。自
の評価を下げる覚悟をして、綾小路を持ち上げるメリットはない」
Aクラスのリーダーである坂 柳が、嘘をついてまで自らの負けを認める利点はない。
真嶋先生の言うように、もし私的な理由でオレを勝たせようとしたのなら、時間切れで
も何でも、幾らでも確実に勝ちを譲る方法はあった。
わざわざこんな場をセッティングして、信憑性の疑わしい話をする必要性はない。
「しかし、だ。話の筋は見えたが、それが真実であるかどうか第三者が確かめる術はどこ
にもない。そうだろう?」
笑われてもおかしくない与太話とも取れる坂柳の発言に、茶柱がそう返す。
「俄かには信じられない話……真嶋先生はどう考える」
茶柱が、険しい顔つきで話を聞く真嶋に、意見を求める。
「どう考えるも何も、今の材料だけでは到底受け入れられるような話じゃない」
真嶋先生が一歩後退しそうなところで、茶柱がそれを止める。
「私個人の意見では、2人の話には一定の真実が含まれていると思っている。月城理事長
68ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
つきしろ」
もうしん
代行が来てから、どうにも学校全体の様子がおかしい」
「単純に月城理事長代行が気に入らないから、などという個人的な感情であれば考慮にも
値しない。あるいは自分のクラスの勝ちを信じたいという妄信も同義だ」
生徒側に立った茶柱に、真嶋先生が厳しい言葉をぶつける。
そしてすぐ生徒であるオレたちにもぶつける。
「2人とも証拠を示せるんだろうな?」
「私たちが直接月城理事長代行から不正したことを聞かされたと言っても、真嶋先生は信
じて下さいませんよね?」
「……当然だ」
ろてい
裏で不正行為を働く人間が、自らその行為を露呈するわけがない。
その話をしたところで響かないのは分かりきったこと。
「月城理事長代行ほどの人間が動いてまで、退学させようとする子供がいるなどと想像が
四 つかないのが本音だ」
「そうでしょうね」
「生徒を疑いたいわけじゃない。こんなところで無駄に嘘をついても得がないであろうこ
症とが分からないほど、おまえたちが愚かだとも思わない。だが根拠に、証拠に乏しい」
信じてやりたいが信じるにたるソースがなければ、真嶋先生は納得しないだろう。
「おまえは何者だ、綾小路。それを俺に教えてくれ」
69ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
・おろ
ちやばしら
あやのこうじ
真嶋先生がその疑問をぶつけてくることは、時間の問題だった。
坂柳理事長を汚職疑惑で謹慎にさせ、月城という人間が送り込まれてきた。
そしてその月城は、ただオレを退学させるためだけに動いている。大切な試験に不正関
与してまで、それを遂行しようとしているのだから疑問を抱くのも必然だ。
自分の口で説明するべきか、あるいは任せるべきか。
オレが答えないでいると、真嶋先生の目は茶柱へと向けられる。
「おまえは綾小路のことを知っているのか?」
先ほどオレたちの発言に一定の真実が含まれていると言った茶柱に真嶋が問う。
「……正直に話せば、私も触りだけしか知らない」
こちらを窺うような視線を向けてきたが、オレはそれを涼しく流す。
ここで茶柱の知る浅い情報を晒されたところで何のデメリットもない。
「入試の筆記試験、綾小路の結果を私は見た。全科目30点という珍妙な成績のな」
「全科目別点……。つまり意図的に揃えたということか」
「調べれば真嶋先生にも分かるだろう」
「フフッ。随分と面白いことをなさっていたんですね」
「だがそれだけで何かの証明になるわけではない。通常通りに考えれば、入学するために
奴手を抜く生徒はいないが、ある程度の学力があればほぼ均等に点を取ることは難しくない
うかが
ずいぶん
70ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
さかやなぎ
うなず
きよたか
だろう。事実当校の入試問題の配点方式は非常にシンプルだ」
「まだある。綾小路が入学する際、坂 柳理事長から特別な生だとだけ聞かされていた」
「坂柳理事長から……? それがこの場に茶柱先生がいる理由ということか」
茶柱が頷き、その時のことを話し出す。
「担任として、綾小路に不都合があれば報告するように頼
都合があれば報告するように頼まれていたからな。そこにいる
綾小路清隆、その父親は非常に権威ある人物だ。そして、この学校への入学を望んでいな
かった。坂柳理事長の計らいで、半ば強引に入学を許可したと聞いている」
「保護者の許可を取らず入学を認めたのか。坂柳理事長も強引なことをするものだ」
普通の子供なら、親の許可があって初めて高校への進学が可能になる。
義務教育を外れるといっても、子供が好き勝手出来るほど世の中は甘くない。
「私の父と綾小路くんは面識があります。だからこそ、綾小路くんの置かれた不遇を憂え
て行動したのでしょう。しかし、それがここにきて問題になりつつあるということです。
月城理事長代行という存在が近づき、父を捏造による不正疑惑で謹慎させ、綾小路くんを
退学にしようとしているのです」
この点が、何よりも真嶋先生にとって引っかかる部分だろう。
「父親が息子の強引な進学に反対し、月城理事長代行を送り込んだ……か」
中途半端な権威では、到底不可能なこと。
ねぞう」
きんしん
ましま
ちゃばしらうなり
「そんなことをせずとも直接学校側に抗議すれば済む話だ」
「既に父親は綾小路と坂柳理事長に接触を済ませている」
「つまり、退学するよう綾小路自身に保護者からの通告はあったと見ていいわけだな?」
「はい。茶柱先生の言うように、オレは坂柳理事長と父親を交えこの応接室で面談してい
ます。廊下に設置された監視カメラ映像を遡れば、事実だと確認できます」
「その上で綾小路が残っているということは、理事長含め退学を拒否したということか」
「そうです」
真嶋先生が確認し、茶柱が頷く。
「坂 柳理事長は生徒の意思を尊重した。それでいったんは収束したが……まさか月城理事
長代行が綾小路を退学させるためだけに送り込まれた存在とは想像もしていなかった」
そう振り返る茶柱に対して、坂柳も同意する。
「無理もないことです。茶柱先生は何も知らないのですから」
「おまえは随分と詳しそうだな」
艇 「ええ。私の方が茶柱先生よりもずっと綾小路くんのことに詳しいですよ」
そんな必要のないマウントを取りに行く坂柳。
「予定になかった私がこの場に現れても、拒否しなかった彼を見れば一目瞭然でしょ
さかやなぎ
つきしろ」
あやのこうじ
72ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
いちもくりょうぜん)
う?」
有無を言わさぬ事実だけを突きつけ、坂柳は誇るように笑った。
「やっと、俺にも話の全体像が見えてきた。少なくとも父親が息子を連れ戻そうとしてい
ることは本当のようだ」
話の状況をだいぶ理解した真嶋先生ではあったが、まだ事態の納得には至らない。
「しかし……。綾小路の父親がどれほどの権威を持っているのかは知らないが、こんなや
り方をしてまで退学させようとしているのは何故だ。そこにリアリティが欠けている」
「綾小路くんが、他の凡夫たちには無い素晴らしいスキルの持ち主だからですょ」
「先日の綾小路の選抜種目試験の結果は見た。フラッシュ暗算、そしてチェスの技量に関
してはかなりのものであることは間違いないだろう。だが優秀な生徒は他にも大勢いる。
特別視するほどのことではないはずだ」
「真嶋先生。ご自身を納得させようと模索することを否定はしません。しかし、いい加減
今起きていることを理解しては如何ですか。入学前から私の父は彼に目をかけ、そして月
城理事長代行が不正をしてまで退学にさせようとしている。それが現実であり唯一の真実
です」
腕を組み、真嶋先生は一度目を閉じる。
「既に真嶋先生の中にも結論は出ているはず。証拠などはこれから探せばいいのです」
しばらく沈黙した後、目を開きオレと坂柳、そして茶柱を見る。
もさく
いかが
城今、
73ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
「そうだな……。意に反した息子の進学が気に入らず、何とかして退学させようとしてい
ることまでは信じよう。だが素直に協力する気になれない。その理由は分かるな?」
オレたちが表面上の話しかしていないことを真嶋先生はよく分かっている。
「すべてを話すつもりはないのだな?」
今回の話を整理し、世間に知られたくない事情があることは感じ取ったようだ。
それくらいの深読みをできるくらいでなければ、こちらとしても困る。
「そうですね。話しても仕方のないこと、いえ意味のないことです」
ホワイトルームの話を一からしたところで、大人には理解が及ばないものだろう。
常識的に考えれば、あの男がおかしなことをしているのは明白。
それに、ここで声をあげてホワイトルームの話をしたところで真実にはたどり着けな
い。
徹底的な根回しの末揉み消されることは確実だからだ。
「なら、そんな無駄な工程を踏む必要はない。
「もし俺が協力を断ればどうする」
つきしろ
74ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
「泣き寝入りするつもりはありませんが、月城理事長代行への対応には苦慮するでしょう
ね。学校側なら試験だろうとなんだろうと不正をすることは簡単でしょうし。事実、種目
選抜試験ではそれを許してしまっている」
ましま
あやのこうじ
生徒だけで阻止するのはほぼ不可能なやり口だ。
あとは真嶋先生がそれを見過ごせる人間なのかどうか、それを問うだけ。
「俺を試そうというのか、綾 小路。……いいだろう。今後行われる特別試験や筆記試験な
ど、月城理事長代行の不正関与を許す真似がないように善処しよう」
話し合いの中、ついに真嶋先生がこちら側へつくことを口にする。
「真嶋先生。それが簡単なことじゃないことは分かっているんでしょうね?」
受け入れた真嶋先生に対し、茶柱が苦言を呈す。
「不正をしているのが事実だとしても、下手をすればこちらの首が飛ばされる」
茶柱がそう言いたくなる気持ちは分かる。
ちやばしら」
なわ
城への反抗は即ち、教師生命を脅かすことにもなる。
中途半端な正義感だけでは、到底戦える相手ではない。
75ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
「まだ完全に信じきったわけじゃないが、綾小路たちの言っていることが真実なら由
きことだ。学校側が不正に試験内容や結果を変えていいはずがない。やる以上は徹底す
る」
「しかし真嶋先生は、今あまり厄介なことに拘わらないほうがいいのでは? 選抜種目試
のルール違反で、今朝減給を言い渡されたばかりでしょう」
「面白い発言だと思ったのか、坂柳がそれに食いつく。
さかやなぎ
「ルール違反で減給? 何をされたのです」
「おまえたちに話すようなことではない」
「DクラスとBクラスの試験内容に抵触するからですか? 遅かれ早かれ、私たちの耳に
詳細は入ることです。それに、今話している月城理事長代行の不正疑惑に関係しているの
なら、懸念材料はこの段階で話しておいて頂かないと。あとで問題になりかねません
よ?」
「今回のこととは一切無関係だ」
話そうとしない真嶋先生に変わり、茶柱が声をあげる。
やまだ
76ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
「私が話そう。Bクラス対Dクラスの選抜種目試験、最後に選ばれた種目にはDクラスの
いちのせ
柔道が選ばれた。そして生徒は山田アルベルト。Bクラスの一之瀬はこの時点で戦意喪失
し、出場すべき生徒を選ぶことが出来なかった」
「山田くん相手では無理ないですね。彼に柔道で勝てる1年生はまずいないでしょうし」
「一之瀬も、当然柔道で戦ってもらう生徒は決めていたはずだ。だが、あのままランダム
塗 に生徒を選び出していればどうなったと思う。不測の事態になると誰もが気付いたはず」
時間切れになれば種目参加していない生徒が選ばれる。
男子だけじゃなく女子も例外じゃない。
「あっさりと負けてくれるなら良いですが、仲間思いのBクラスですからね。一之瀬さん
のために、選ばれた生徒は全力で立ち向かっていった可能性があります」
いちのせ」
たた
ましま
つきしろ」
相手が誰であれ、アルベルトが全力で叩きのめすことも十分考えられる。
そうなれば、大きな事故にも繋がりかねない。
「だから独断で真嶋先生は不戦敗のジャッジをした。その点が月城理事長代行は気に入ら
なかったのだろう」
それで減給処分か。ルール違反と言われれば、確かにルール違反だ。
「その件も今回の件も同じだ。生徒にとって危険と判断すれば止める。不正があれば正
す。教師が生徒に教えていることを守らないでどうする」
そのためなら、自らの進退を揺るがすことになっても後悔がない。
「止められないようだな」
「常に覚悟を持って、俺は教師を続けている」
言うだけなら簡単だが、真嶋先生は有言実行できる逸材のようだ。
「おまえの……いや、真嶋先生の決断がそこまで固いのなら、これ以上言うことはない」
「ひとまず交渉成立と言ったところでしょうか」
坂柳からオレに言葉が向けられ、オレも頷いて答える。
これ以上真嶋先生への説得は無意味と判断したのか、茶柱は引く。
「真嶋先生が首を縦に振ったのなら私も協力しよう。構わないな? 綾小路」
「こちらの陣営が1人でも多いことは歓迎すべきことなので」
さかやなぎ
ちゃばしら」
77ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
あやのこうし
とど
おっしや
「この話はここで一度留めておく。けして口外しない。それで問題ないな?」
「もちろんです」
真嶋先生も茶柱も、月城の不正疑惑を実際に見ているわけではないからな。
それに囲い込む教師が増えれば、それだけ情報が洩れることにも繋がる。
不正を暴こうと動いていることを気づかれれば、当然月城は警戒心を強める。
「私もひとまずは綾小路くんの味方につくつもりです」
「坂柳。綾小路の事情を知っているからと言って特別視するのは問題だぞ」
「何を仰っているのですか? 彼を特別視するのは当然のこと、いえ権利です」
真嶋に対して、真っ向から反論する。
「……権利だと?」
「そうです。クラス別に争い合う制度とはいえ、当然様々な事情が交錯しあうもの。他ク
ラスの友人や恋人のために裏切る生徒、金銭で協力し合う関係。あるいは脅し。感情1つ
でクラスの垣根を越えた協力関係になることだってある。この学校はずっとそうだったの
ではありませんか? いいえ、社会全体で見ても変わりないでしょう。違いますか?」
誰にだって特別視する相手くらいはいる、それを止める権利は無いと坂柳は主張する。
がAクラス全員を見殺し、綾小路くんだけを救い上げたとしても、それを先生方に非
おど
78ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
謂れはありませんね。恨んで良いのは犠牲となった生徒たちだけです」
さかやなぎ
ましま
ようしゃたっぷ
つきしろ
坂柳の言葉に真嶋先生は不服を覚えただろうが反論はしなかった。
「ですが必ずしも特別視が、彼の歓迎するものであるかどうかは別でしょう」
「どういうことだ」
「代行を排除するまでの間は静観しますが、それ以降の話は別だということです。それ
に、DクラスがAクラスにとって邪魔となる場合には、いつでも容赦なく叩き潰します」
「そうか。それならいい」
強い意志を持って臨む坂柳を、真嶋先生は受け入れる。
「改めて確認しておくが、月城理事長代行が不正をした証拠はどこにもないんだな?」
「既に抹消されたでしょうね。今から探りを入れても無意味かと」
わざわざ証拠を残すような間抜け
はしない。
「なら、やはり次の出方を待つしかないようだな」
2年に上がった後の試験など、オレたちよりも教師側は深く知っている。
月城がどう出てくるかを考えるのは真嶋先生たちに任せることにしよう。
「そろそろ30分を超える。いつまでも謝恩会を抜け出しているわけにもいかない。まずは
生徒のおまえたちが出るんだ。こっちは後でバラバラに退室する」
「分かりました」
オレと坂柳は同時に応接室から出て、廊下へ。
79ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
そうかっ
そして2人で歩き出す。
「思い切った判断でしたが、真嶋先生を仲間に引き込めたのは大きなプラスですね。1年
生の総括役であれば、誰よりも月城理事長代行に近づけますし」
「ああ。完全に防ぎきれないとしても、抑止力になれば十分効果的だ」
「正義感の強すぎる点が、やや気がかりでしょうか。アレはマイナス評価ですね」
「そうだな。頼もしい反面、それが足を引っ張ることもある」
「深く突っ込みすぎれば、容赦なく真嶋先生の首は飛ぶでしょうね。まあそうなってしま
うような人物なのであれば、遅かれ早かれではあるのでしょうけれど」
そう話す坂柳の横顔は、とても幸せそうだった。
「楽しそうだな」
「楽しいですよ。綾 小路くんは楽しくありませんか?」
「どうかな。こっちからすれば面倒事だからな。おまえがここに来たのは―」
「はい、楽しそうだったからです。ご迷惑でしたか?」
すぐにそう認める坂柳。
「いや。おまえが来たことで真嶋先生に対する説得力が上がった。感謝してる」
「それは良かったです」
こっちを向いて、坂柳が笑う。
「「それに、学校側の不正で何度も勝負を邪魔させるわけには参りませんからね」
あやのこうじ
80ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
つきしろ
さかやなぎ
月城のやった不正に対し、坂 柳は強く憤慨していた。
徹底して戦い、排除する方向で動いていくだろう。
「今敵は油断しています。早々にケリをつけるべきでしょう」
月城からしてみれば、オレたちはたかだか高校生。何が出来るのだと高を括っている。
そこに隙が出来る。
「綾小路くん。当面の間、月城理事長代行の排除に尽力されてくださいね」
「それなら遠慮なくそうさせてもらおうか」
信用できるかどうかを天秤にかける必要はないだろう。
これまで接してきて、坂柳の性格は十分に熟知したつもりだ。
あやのこうじ
じんりよく、
81 ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
生徒2人が去った後。
ましまちやばしら
真嶋は茶柱に対して率直な意見をぶつけた。
俺にはまだ、少し理解が及んでいないところがある」
「それは私も同じです真嶋先生。しかし、実際に綾小路の言っていることは真実でしょ
う」
「生徒1人のために学校の仕組みにまで手を入れる、か」
どれだけ現実だと周囲に促されようと簡単に理解できることではないと真嶋は嘆く。
「実際に綾小路を1年見てきた茶柱先生の目にはどう映った」
「それは難しい質問ですね」
長居するわけにもいかず、2人は綾小路と坂柳が出て1分ほどして応接室を出る。
「一見すると無気力で無頓着。どこにでもいそうな目立たない普通の生徒だ」
それは他クラスの担任を受け持つ教師も似たような印象を抱いていただろう。
現に印象は薄い。名前と顔が何とか一致する程度の存在。
「だが大人相手にも動じず、全てを見透かすあの目は、とても子供のそれとは思えない」
「俺にはまだ、半信半疑だがな」
「確かに。高校1年生、と言ってしまえばそれまで」
「まだ教師になって数年だが、この学校で様々な生徒たちを見てきた。ここ数年で言えば
ほりきたまなぶ」なぐもみやび
㎜ 堀北 学や南雲 雅が頭一つ抜けて優秀な印象だったか」
「それは私も否定しない」
両者ともに学力、身体能力は優秀。学年随一。そして類まれなカリスマ性を持ってい
る。
「今年の1年生たちは、今現在あの2人には一歩及ばない印象だった。もちろん、一部の
能力だけであれば匹敵する生徒もいるが、全てというわけにはいかない。総合して、綾小
82 ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
ましま
ちやばしら)
あやのこうし
あき
路はどこまで持っていると見る」
「それは今後に何か影響があることなんでしょうか?」
「いや、それはない。綾小路がどれほどの生徒であれ月城理事長代行の勝手を許すつもり
はない。単なる俺の好奇心だ」
「好奇心……珍しい表現を使いましたね真嶋先生。ですが私も探っている段階」
茶柱もまた、綾小路のことを知りたくて仕方がない人物の1人。
答えたくても答えられないのが実情だ。
「まったく厄介な問題を持ち込まれたものだな」
呆れるように真嶋は腕を組んだ。
「本来教師とは、生徒と適切な距離を保ち管轄する立場にある。妙な関係を築くのは得策
じゃない」
「そのためには、一刻も早く月城理事長代行を排除しないと」
「排除してそれで終わることなのか?」
「どういうことだ」
「不正を暴き、その後次の刺客が送り込まれてこない保証はないだろう。そうなれば、綾
路個人の問題から飛び火し、学年全体……場合によっては学校全体に悪影響を及ぼす」
それが不安だと真嶋は言った。
かんかつ
つきしろ
83 ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
とは言え個人の生徒を見捨てるような真似を当然真嶋はしない。
「泥沼の展開になっていくことを、俺は恐れている」
「そうだな」
そうなれば正当な評価を受けられなくなる生徒も出てくる。
それは教師として絶対に防がなければならないこと。
「願わくば、俺のこの予感が当たらないことを期待する」
2人の教師は、この先に待ち受ける展開を想像し、それが杞憂であることを願った。
きゅう
さかやなぎ
そば
84ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
教師や坂 柳との話し合いを終え時間潰しを済ませた後、オレは体育館傍にやってきた。
間もなく謝恩会を終えた3年生たちが出てくることになっている。
要は出待ちの状態。
1年生も2年生も時間が近づくにつれ緊張が増しているようだ。
3年生の中にはこの卒業式が終わった直後の今日、学校を旅立つ者もいるという。
中には今日まで伝えられなかった様々な想いを口にする生徒もいるかも知れない。
全部で何人くらいいるだろうか。目に見えている範囲でも100人近くはいる。
ほりきた
にらかえ
そして、やや集団から離れた所に見知った人物の姿もあった。
「やっぱり来たんだな」
待ち人たちの中に立つ堀北に声をかけると、睨み返される。
「……何よ、いけない?」
「いけなくない。むしろちょっと見直したくらいだ」
「見直す? よく分からないことを言うのね」
「以前のままのおまえだったら、この場に来れてなかったんじゃないかと思ってな」
そんなオレからの褒め言葉を、堀北はどこか不服そうに聞く。
「そうかしら。私は私よ、何も変わっていないわ」
成長、あるいは自己の見つめ直しを否定する。
いや、否定するというよりは、他人の前で素直に認められないだけか。
体育館での謝恩会が終わったのか、ついにその扉が開く。
晴れて卒業式は完全な終わりを告げたようだ。
卒業生、在校生に残された公式な最後の交流の場は、この瞬間だけになった。
解散を受けて続々と出てくる3年生たち。
その姿の多くは晴れやかだが、一部の生徒たちに笑顔はない。
学校を去ることの寂しさか、それともAクラス卒業が叶わなかった故か。
85ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
だが、後者であれば大半の生徒の様相が沈んでいなければおかしい。
一見しただけだが、Aクラス以外の生徒の表情にも喜びのようなものが含まれている。
「どう思う」
その様子を堀北に問う。
「夢への近道が叶わなくても、自力で切り開くことは出来るからじゃないかしら。進学も
就職も、実力があれば特権などなくても大抵は実現できることよ」
人生の道はこの先も立ち止まることなく続いていく。
多くの生徒は現実と向き合い、これからの進路を決めて歩き続けているってことか。
そういう意味ではこの晴れ舞台を堂々と過ごしていても、何ら不思議はない。
中には誰とも絡まず一目散に寮へと帰っていく生徒もいるが、大半は足を止めている。
3年間で残してきた爪痕、いや痕跡がここで見られるような気がするな。
残った卒業生、生徒会長を務めた堀北学の姿もそこにあった。
まだ誰も駆け寄っていない今がチャンスだ。
下手に人が集まるようなことになれば、堀北に入り込む余裕はなくなるだろう。
この時を心待ちにしていた堀北だが、一歩も動けずにいた。
「行ってくればいい」
「それは分かってるわ」
言われるまでもないこと。兄と話すため、ここで待ち続けていた。
から
まなぶ
86ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
ためら
しかし、いざその時が来ると体が動かない。
そうこうしている間に、1人、また1人と堀北兄に近づいていく生徒が増えていく。
待っていては物事は進まないと判断し、強引な手段を取る。
オレは踏み出すことに躊躇いを見せる堀北の背中を押す。
「ちょ、ちょっと?」
「妹としての特権を使ってこい」
はりきたかたく
そう促すが、堀北は頑なに足を地につけ前に行こうとしなかった。
「……今私が兄さんの下に駆け寄るのは、とても不自然よ」
「おまえが混ざっても別に不自然じゃないけどな」
「不自然、不純物よ」
自分で自分を蔑むように、堀北はそう評した。
この間の罠、堀北の手料理とどこか被るように、入学直後を思い出す。
1年生たちの前で演説する堀北学を、遠くの届かない存在を見つめる目で見ていた。
細かな部分で成長していても、核心部分は同じものがある。
多くの経験を積んで成長してきていても、難しい部分はあるんだろう。
また弱気が顔を覗かせたせいか、そう思ったが……。
「でも勘違いしないで。単に弱気になってるわけじゃない。兄さんの3年間を……どんな
わな
かぶ
87ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5

3年間だったのかを見てみようと思ったから、私はここに来たの」
「なるほどな」
話しかけることが全てじゃないと。
それも悪い話じゃない。
堀北兄の下には、更に何人かの2年生が駆け寄った。
「おまえの兄貴、結構人気あるんだな」
生徒会長として、そしてAクラスとしてあり続けた男。当然人望もあるんだろう。1年
生とは接点がないとばかり思っていたが、意外にも多くの1年生が駆け寄っている。
やがて小さな輪は大きくなりはじめ、卒業生を交えていく。
兄貴は時折小さな笑みを見せながらも柔らかい態度で後輩たちと接していた。
最後の最後でちょっとした、違う顔を見たというか。
重圧のようなものから解放された雰囲気を見ることが出来た。
そんな兄の様子を、堀北は目に焼き付けるように、瞬きを惜しむように見ている。
そしてそんな兄の下に1人の男子生徒が姿を見せた。
現生徒会長、2年Aクラスの南雲雅だ。
それに続くようにして、副会長の桐山、秘書の溝脇と殿河、朝比奈の姿もある。
場が重くなったというわけではなく、独特の空気のようなものに変わっていく。
まばた
88ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
きりやま」
みぞわきとのかわあさひな
3年間だったのかを見てみようと思ったから、私はここに来たの」
「なるほどな」
話しかけることが全てじゃないと。
それも悪い話じゃない。
堀北兄の下には、更に何人かの2年生が駆け寄った。
「おまえの兄貴、結構人気あるんだな」
生徒会長として、そしてAクラスとしてあり続けた男。当然人望もあるんだろう。1年
生とは接点がないとばかり思っていたが、意外にも多くの1年生が駆け寄っている。
やがて小さな輪は大きくなりはじめ、卒業生を交えていく。
兄貴は時折小さな笑みを見せながらも柔らかい態度で後輩たちと接していた。
最後の最後でちょっとした、違う顔を見たというか。
重圧のようなものから解放された雰囲気を見ることが出来た。
そんな兄の様子を、堀北は目に焼き付けるように、瞬きを惜しむように見ている。
そしてそんな兄の下に1人の男子生徒が姿を見せた。
現生徒会長、2年Aクラスの南雲雅だ。
それに続くようにして、副会長の桐山、秘書の溝脇と殿河、朝比奈の姿もある。
場が重くなったというわけではなく、独特の空気のようなものに変わっていく。
まばた
88ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
きりやま」
みぞわきとのかわあさひな
さすが
おびや
「卒業おめでとうございます、堀北先輩」
素直に賞賛する言葉を投げかけながら、南雲が笑みと共に堀北兄に近づく。
そんな南雲を堀北兄は嫌がることもなく迎え入れた。
「全く、流石ですね堀北先輩。結局、俺はあなたを脅かすことは出来なかったッスよ」
「そうでもない。正直、最後の最後まで俺がどう転ぶかは分からなかった。もしおまえに
敗因があるとすれば、それは俺と同じ学年でなかったことだ。どれだけ深く干渉しようと
しても、結局は外野に過ぎない」
どれだけ戦おうと願っても、学年という違いだけは飛び越えることが出来ない。
直接試験に参加できない以上、やれることも極めて限られてくるからだ。
もし本気で蹴落とすことだけを考えるなら、龍 園のように場外乱闘をする方法もある。
だが、南雲はそういった手立てを講じることはなかったと思われる。
「そうッスね。あーなんで1つ年下に生まれたんだか」
そこには不満はなく、むしろ同学年でなかったことを悔やむ姿だけが見て取れた。
「こんな俺でしたが、最後に握手してもらえませんか」
「もちろん、断る理由はどこにもない」
堀北兄も快く快諾し、2人の間に握手が生まれる。
しばらくの間心地よい沈黙が流れた。
りゆうえん
89ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
ほりきた
生徒会長同士、言葉を交わさずとも分かり合える要素は多いのかも知れない。
「おまえにはこの後も、長い1年間が待っている。満足のいく学校生活を送れ」
先輩からのアドバイス。南雲の暴走を危ぶむような発言は含まれていない。
むしろ、好きなことをやれと発破をかけた。
「ええ。先輩がいなくなった後の少ない期間、精いっぱいやらせていただきます。本当の
実力主義の学校に変えていきますよ。その準備は整いましたからね」
うなず
その発言を、堀北兄は正面から受け止め一度頷く。
「年下であることを悔やんでいたが、似たような気持ちかも知れない。おまえの作ってい
く学校を見られないのは少し残念だ。間近で見れば、もっと理解できたこともあるだろ
う」
90ようこそ実力至上主義の教室へ11.5

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