p3

Màu nền
Font chữ
Font size
Chiều cao dòng

91 ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
「どうッスかねえ。こればかりは先輩と相容れないと思いますょ」
学校の伝統とルールを守ろうとする者と、それを壊そうとする者。
きた
わす
きょうだい
それぞれの考え方が真逆である以上、対立は避けられない。
「それに、大丈夫ッスよ。堀北先輩が残した後輩もいるじゃないですか」
そう言うと、南雲の視線は少し離れた所で見守っているオレを捉えたわけではな
く堀北妹を見据える。
隣に立つ堀北が、僅かにだが身体を緊張させたのが分かった。
「あなたの妹がいれば、十分に後で語り継いでもらうことが出来ます」
卒業後、兄妹であれば遅かれ早かれ再会する。
その時にでも自分の話を聞いてくれ、ということのようだ。
「そうかも知れんな」
肯定し、堀北兄と南雲の力強く繋がれた手と手が離れていく。
「ありがとうございました」
「こちらこそだ」
元生徒会長堀北学、そして現生徒会長の南雲雅。
最後の最後は、意外にも穏やかなムードで幕を閉じた。
南雲は他の生徒の邪魔をするつもりはないのか、すぐに堀北兄から距離を取る。生徒会
勤 長同士の組み合わせは華があるが、逆に他人を寄せ付け難いモノもあるからだろう。
そんな南雲は距離を置いて見守り続ける堀北の方へと近づいてきた。

おだ
92ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
あさひな
たんのう

同じく2年Aクラスの生徒、朝比奈なずなも一緒に。その他生徒会のメンバーと思われ
る生徒は、別の卒業生に会いに行くのか姿を消していた。
「話は聞こえてたよな? 来年、じっくりと堪能していってくれ。確か名前は――」
「堀北……いえ、鈴音です」
緊張を含んだ堀北の声。
普段の堀北であれば動じることはないのかも知れないが、兄との会話を聞いた直後の影
響だろうか。
その様子をどこか楽しむように南雲は一度振り返る。
視線の先が捉えたものは言うまでもない、生徒会長の堀北学。
リスクを顧みず、どこまでも戦いを挑み続けた相手。
今は後輩たちに囲まれ、卒業の花束などを渡されているところだった。
「鈴音、おまえの兄貴はとんでもない人だった。兄妹であることを純粋に誇っていい」
そう言って褒め、再び堀北鈴音へと視線を戻す。
「はい。誇りにしています」
返ってきた視線に対して、堀北は力強く答えた。
「何か俺に聞きたいことがあるなら答えてやってもいい。今日は気分がいいからな」
「……それなら遠慮なく聞かせてください」
93ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
ようさん
そんな堀北は、南雲に対して1つの疑問をぶつける。
「悔いはないんですか」
「悔い?」
「南雲生徒会長の目には、曇りなど何一つなさそうに見えたので」
先ほどの2人の握手、そして会話のことを言っているのだろう。
南雲は堀北学がAクラスで卒業したことを、心から賞賛しているようだった。
だが、外部から見た生徒会長同士の関係は違う。

南雲が執拗に堀北学に戦いを仕掛け、Aクラスからの降格を狙っていた。
そんな南雲を、当然堀北妹は快く思っていなかっただろう。
だからこそ、素直に堀北学のAクラス卒業を褒めたたえる南雲。
自らの仕掛けた戦いが、防がれたにもかかわらず。
「堀北先輩に簡単に勝てるとは思ってない。勝てる相手なわけがない、そうだろ?」
「それは……そうですが」
みやび
「雅も、堀北先輩には完敗って認めてるんだ」
あさひな
口を挟んできた朝比奈に、雅は軽く視線だけを向ける。
「負け? 何を以て負けなんだ? なずな」
「え? だって堀北先輩はAクラスで卒業したわけでしょ? 負けじゃない」
94ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
そば
わざわざ聞き返されることじゃないと、朝比奈は答える。
そんなことを言う彼女に対し、南雲は即座に間違っていると指摘した。
「確かに結果だけを見れば先輩のAクラス卒業を許した。だが、それが負けに繋
と?」
「負け……だと思うけど?ねえ?」
朝比奈は傍に立つ堀北に同意を求める。
堀北は答えず、南雲の言い分に耳を傾けた。
「俺は確かに勝負を挑んだ。だが、勝ち負けを求めたわけじゃない。仮に、もし堀北先輩
がBクラスに落ちてたとしても、根底にある評価は何ら変わってなかっただろうな。あの
人の強さや凄さはクラスがどうとかで測れるものじゃないからな」
南雲の言い分に朝比奈はどこか納得がいっていないようだった。
「分からないか?なら、俺が今回のことで何か評価を落としたか? この学校で生徒会
m 長をしていて、Aクラスの座に留まり続けてる。そのどこに負けの要素がある?」
「いやー、でもさ」
「そもそも、2年と3年じゃまともな勝負が成立するはずもない」
「言いたいことは分からないでもない。
しかし、まともな勝負が成立しないと分かっていても南雲は堀北兄に挑み続けた。
「ただ俺は認めてもらうために……いや、認めさせるために今日まで先輩にアタックして
とど
95ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
ほりきた
たようなものなんだよ」
そういう意味では、今日の堀北兄を見る限り南雲を認めている節はあった。
いや、元々実力そのものは評価していたと考えられる。
ただやり方を受け入れることが出来なかっただけだ。
恐らく南雲は、そのやり方を含めて認めさせたかったんだろうが。
「なんか、それって恋する乙女みたいな発言」
「そうかもな。卒業後、先輩がどうするのか大体話は聞いてる、俺もそれを追うだけさ」
南雲の顔には本当に悔しさや負け惜しみのようなものは見られなかった。
純粋に堀北兄とのやり取りを、最後の最後まで楽しんだってところだろうか。
「卒業後も、って。本気ぃ? 進路まで堀北先輩に合わせるわけ?」
「少なくとも今の俺はそのつもりだ」
「あーあ。ホント好きよね堀北先輩のこと」
「2年の中に俺の敵はもういない。当然1年の中にもな。つまり、この学校でやるべきこ
とはあと1つだけだ。学校の仕組みそのものに手を突っ込んで退屈を面白くする」
南雲雅が生徒会長になって任期の半分が過ぎようとしている。
しかし、今日まで何か目新しく動いたことはない。
堀北学が卒業し自らが3年生になることで、いよいよ始動するのだろう。
96ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5

あやのこうじ
さい
それがどんなものになるのか、今はまだ想像がつかないが。
「それにしても、この1年おまえの評価はよく分からないままだったな、綾小路」
南雲の視線がここで初めてオレに向けられる。
その目は堀北兄 妹に向けられるものとは違い、まさに『退屈』の目だった。
「査定するまでもないってことですよ」
オレが注目されていることに、何か引っかかりを南雲も感じているだろう。
だが、その違和感だけでは興味を持つには至らない。
それでいてくれるのなら、今こっちが刺激を与える必要性は皆無だ。
「ま、4月になれば嫌でも分かる。本当の実力主義になれば嫌でも戦うしかなくなる」
堀北兄たち3年生が卒業したことで、南雲の完全な支配下となった学校。
生徒会とはいえ、どこまで学校に対し影響力を及ぼせるかは懐疑的なところだが、南雲
の自信を見るに1年度の時とは違ったものになることは間違いなさそうだ。
「クラス戦ではなくする、ということでしょうか」
そんな南雲の発言が気になったのか、堀北は質問をぶつけた。
「それが出来るなら理想なんだが、それはどうにも不可能だ。学校側が認めない」
肩をすくめながら、南雲は呆れたような息を吐く。
「だが、これまで以上に個人の実力が左右する仕組みには変える。優秀な生徒が上位のク
かいぎてき
97ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
スやひ一
ラスにいるのは当たり前のことだ、そうだろ?」
その点を、堀北は同意も否定もせず、黙って聞いていた。
「それから、1年から3年までが今まで以上に一緒くたになるような面白いモノを
提案中だ。学校側が認めればおまえと戦うこともあるかもな」
もちろん南雲にしてみれば、今のオレなど眼中にないだろう。
だがそれでも、本能のどこかではこちらを値踏みし、推し量ろうとしている気がする。
「雅、そろそろ行かない? 挨拶したい先輩いるでしょ、帰っちゃうよ」
「そうだな。1年とはいつでも話が出来るか」
あさひな」
ほりきたまなぶ
南雲と朝比奈は、2人で堀北学以外の3年生のところへと足を運ぶようだった。
「ふう……あの手の人と話すのは色々と気を遣うわね」
「生徒会長だしな」
学年は1つしか違わないが、オレたちからすれば雲の上の存在だ。
「私は帰るわ。もう、やるべきことは済んだもの」
結局、この場で兄貴と話すことは諦めたらしい。
「いいのか? 明日には学校を去る可能性だってあるんだぞ」
「そんなこと……あなたに言われるまでもなく分かってるけれど……」
どうにもならないジレンマを噛みしめながら、堀北は一足先に帰路に就くようだ。
98ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
それを強制的に止めるわけにもいかず、見送ることに。
「あなたは帰らないの?」
「ああ。オレはもう少しここに残る」
「そう……それじゃ」
何となくオレの動向が気になるようだったが、堀北は背を向け寮へと戻って行った。
オレは何となく、堀北学を始め3年生たちの様子を見つめることにした。
特に興味があったわけじゃない。
どうせなら、この光景を目に焼き付けておこうと思ったからだ。
まだ見ることの出来ない、2年後の自分を、何となく想像しながら。
それからしばらくの間盛り上がりを見せていたが、1人、また1人と帰路に就く。
やがて全体が解散の流れとなった頃。
別れの挨拶を済ませたであろう堀北兄が、オレを見つけ近づいてきた。
「まだ残っていたのか」
この場に似つかわしくないことを、堀北兄もよく分かっているんだろう。
「俺を待っていたのか?」
「そんなところだ」
オレが他の3年生に話しかけていないことは、遠目にも分かってただろうしな。
「あんたと話す機会もこれで最後になるかもしれないと思ってな。いつ学校を出るん
99ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
かんじん
すずね
ほりきた
だ?」
早速だが、肝心なことを聞いておくことにした。
もしこの後すぐにでも旅立つようなら、堀北に声をかけなければと思ったからだ。
「3日の昼。2時半のバスに乗る予定だ」
つまり一週間後か。即日ってことではないらしいが、すぐだな。
「鈴音は帰ったようだな」
「ひとまず、あんたの3年間を目に焼き付けて帰っていった」
2人で寮の方角へと一度視線を向ける。
当然、もうそこに堀北の姿はない。
「そうか」
その表情からは、喜怒哀楽を読み取ることは出来ない。
しかしこのままセッティングをしなければ、2人は会えないまま終わる可能性もある。
そんなことを勝手に危惧していると……。
「もし良ければ、鈴音に言伝を頼みたい。3日の正午に正門近くで待つと」
「自分で伝えた方がいいんじゃないか? 今からだって時間はあるだろ」
むしろ会う意思があるなら話は早い。
堀北はすぐにでも飛んでくるかも知れない。
ことづて
100ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
「あいつは素直になれない可能性があるからな。おまえから上手く伝えて欲しい」
「逆効果かもな。オレが伝えたら来ない可能性はあるぞ」
捻くれてる部分があるからな。
「その時は、鈴音がその選択をしたというだけだ」
「本当にいいんだな?」
念を押して確認すると、迷わず返事が返ってくる。
「いい。おまえに委ねる」
まあ、責任を取らなくていいのなら伝えておくだけなので断る理由もない。
それにこの話を聞けば、堀北は十中八九見送りに来るだろう。
既に雪解けは始まっている。
「おまえとはもう少し話がしたかったが、この後は俺に予定が入っている」
後輩たちからは色々と誘われていたみたいだしな。
今日くらいは兄妹だのなんだのを忘れて、1人の学生として過ごしたいか。
「それにおまえも、無意味な長話は求めないだろう?」
「まぁそうだな」
いくら人気がなくなってきたといっても、やはり元生徒会長といるのは目立つ。
「もし良ければ3日、おまえにも見送りに来てもらいたい」
きょうだい
101 ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
「大勢の前で別れの挨拶を述べるのは苦手だ」
「心配ない。当日はおまえと鈴音以外に呼ぶつもりはない」
それならばと、オレは小さく頷いてそれを快諾する。
「すまないな」
そう残し堀北兄はオレから離れた。
3年で唯一話す相手だけに、堀北兄がいなくなれば用事はなくなる。
オレも帰るとするか。
あやのこうじ
「綾小路くん。良かったら一緒に帰らない?」
そんなところで、そう声をかけてきたのは平田だった。
先ほども、大勢の3年生のところに挨拶していたのは遠目にも確認できていた。
「もういいのか?」
5 「うん。今日が卒業式と言っても、ほとんどの先輩たちはあと数日学校に留まるからね。
親しかった人たちは個別でお別れ会を開くみたいだから」
平田のことだ、そういった場への招待も幾つか受けていることだろう。
3年生は最大4月5日までの滞在が認められている。
もちろん、それまでの間に準備を済ませた生徒から学校を後にするんだろうが。
残された期間は僅か。ほとんど身支度は済ませていると見てもいいはずだ。
ひらた
102ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
断る理由もないので、そのままオレは平田と寮へと戻ることに。
平田と帰ることになったが、コンビニを過ぎた辺りで平田がこちらを向いた。
そして、また何事もなかったかのように正面を向く。
そんな感じのことを、この数分間で平田は何度か繰り返していた。
先ほどから会話のタイミングをうかがってるようだが……
やがて意を決したように平田が口を開いた。
あやのこうじ
「実はちょっと綾 小路くんの耳に入れておきたいことがあって、ね」
少し歯切れ悪そうに、平田がそんな風に切り出した。
学年末試験のことに触れるのかとも一瞬思ったが、そんな感じでもない。
「何か相談事、か?」
「そうだね……うん。相談になると思う」
少しだけ考えた後、それを認める。
「解決してやれるかは分からないが、何でも言ってくれ」
平田に頼られるのは悪い気がしない。
だが相談の内容を予測することは出来なかった。
103 ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
やまうち
山内退学の件で沈んでいた時はそれ一辺倒だったが、その件は既に解決した。
心の中にくすぶっているものは依然あるだろうが、相談事にするほどのものじゃない。
既にある程度の消化を終え、自己解決出来るほどにはなったはずだ。
「意外だって思うかも知れないけど……」
そんな風に前置きして、平田が話し出す。
「僕は、その、今は恋愛に対して積極的になれないというか……よく分からないんだ」
本当に意外な切り出しだった。
まさか平田から恋愛に関する相談をされる日が来るとは。
「よく分からない?」
とりあえず話の全貌を聞くことにしよう。
話を続けるように促す。
「僕が、多分女の子を好きになったことがないせいだとは思うんだけど……」
どこか恥ずかしそうに、そう告白する平田。
「つまり、女の子と付き合ったことはないと?」
「軽井沢さんとの契約を除けば、そうなるね」
意外ではないのかも知れないが、やっぱり少し意外だ。
男女どちらに対しても平等に接する平田だが、恋愛経験の1つや2つはあると思ってい
ぜんぼう
いざわ
104ようこそ実力至上主義の教室へ 11.5
た。
さすが
恵との恋人関係は流石にノーカウントだろう。
互いに恋人のフリをすることで、恵が虐
阻止するためだけにあったもの。
しかし女の子を好きになったことがないとなると……。
「今も、気になる女の子もいないってことか」
「そうなるね……」
女の子を全員等しい目で見られるってことは利点でもあるが、なんとも不思議なもの
だ。
「じゃあみーちゃんのことは?」
みーちゃんは、平田との関係が進展することを強く望んでいる。
そして平田に対して明確な恋愛感情を見せている。
105 ようこそ実力至上主義の教室へ11.5










Bạn đang đọc truyện trên: Truyen2U.Pro

#youkoso