第4話

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そして翌日、アフタヌーンティーを楽しんでいる私のところに突撃してきたのは、宰相の子息のディラック・ロングストーンだった。


 アレン、ナーダ、ディラックのこの三人がライラを断罪した愚か者たちだと私は既に調べて知っている。


「レティシア姫、リラに対して子供ができない処置をしたそうですね?聖女の様な彼女に何てことを!」


 私の側で給仕していたテティは驚いた顔をしている。


「えぇ、貴女の驚きはよく分かっていてよ、テティ。我が国では下位のものから上位のものに話しかけることはマナー違反とされていますものね。私もこの国に来てから初めて経験したわ。なによりもクレメンデルの王女である私のところに先触れも出さずにやって来るなんて、いったいどこのどなたかしら?」


 私が眉を顰めて、話をするとテティも頷く。


「えぇ、全くです、姫様。この国は常識のない方ばかり。城の衛兵も姫様がいるこの部屋に知らない殿方を通すなどあり得ません。私から、クレメンデルに報告して、きちんと仕事をこなす衛兵を呼び寄せます。」


 私たち二人の会話に少し冷静になったのか、飛び込んできた男は一瞬気まずそうにしたものの、怒りが勝った様で、怒鳴る様に続けてきた。


「あまりに心ない所業でしたので、勢いこんできてしまいました、この国の宰相のロングストーン家のディラックと申します。」


 そう言って彼は形ばかりのお辞儀をする。


「そう、私はレティシア・クレメンデルよ。まぁ自己紹介の必要はなさそうですけれど。」


「リラのことですが、彼女になんて酷いことをなさったんですか!」


「あらまぁ、それは私に言われても困るわ。私が嫁ぐにあたって、側妃を娶ることは許さないし、公娼以外との行為を禁じることも前もって契約されていましたもの。

 そして公娼であれば、後々の憂いを除くために、子供ができない処置をするのは、この国でも例外ではないでしょう?

 その上で、『彼女を公娼にする』と決めたのはアレンですわ。」


「彼女を公娼にですって?他にも道があったでしょうに。」


「えぇ、もちろんアレンと別れる道も、アレンが王位継承権を放棄する道も全て伝えた上でどうするか、当事者の二人に聞いて、二人が結論を出しましたのよ?私に言われても困ってしまいますわね。」


「しかし、彼女の処置を手配したのは貴女だと聞きましたが、レティシア姫。」


「先程から愚かな質問ばかり。

 ねぇ、ロングストーン卿、たとえば、あなたの知り合いが死刑になった時にあなたは、死刑の執行人を恨むかしら?それよりも指示を出したり、判決を下した人間を恨むのではなくて?」


 私はため息をつきながら、手にしたカップをテーブルに戻す。そしてテティに横目でちらりと指示を出すと、聡い彼女は心得たとばかりに下がってくれた。きっと宰相を呼んできてくれるだろう。私には国から連れてきた護衛たちがいるから、問題がない。


「えぇ、そうですね。たしかに貴女が嫁いでくる時に、公娼以外は認めないと調印しました。

 けれど、殿下は彼女を公娼にしても、子供ができない様にする処置はしないつもりだったと言っていました。

 あなたが関与したせいで、リラは傷つくことになったのです!」


 表面上では笑顔を取り繕いながら、私はディラックを散々馬鹿にしていた。開いた口が塞がらないとはこのことである。どこの馬鹿が『調印を破るつもりだったのに、きちんと守りやがって』と文句を言ってくるのだろうか。


「そうですか、それではアレンは、彼女を名前だけの公娼にして、処置をするつもりはなかったのですか。それは国王陛下もご承知のことかしら。」


「当然のことです。貴女は政略結婚の相手でしかないんだ、聖女の様な彼女と殿下の愛を邪魔する権利などないものを!おかげでお二人の子供が見られなくなってしまいました!この国の損失です!それに、このせいでお二人がうまくいかなくなったらどう責任を取るおつもりか!」


「あらまぁ。それはお気の毒。

 でも、二人の子供が見られなくなったと仰るけど、それは私との結婚が決まった時点で当然のことでしょう?それに、二人の仲についてどうして私が気にしてあげる必要があるのかしら?

 そもそも、ロングストーン卿、あなたは『国同士の約束を国ぐるみで、破るつもりだった』と教えて下さってますけど、その様な機密事項を私に打ち明けるということは、我が国での地位をお望みですか?

 あなたの下さった情報はとても有意義なものですが、マナーを守れない方は我が国には必要ありませんの。ごめんなさいね。

 今後はきちんとマナーを守ってから自分を売り込んだ方がいいと思いましてよ?」


「誰が、貴様の国に地位など望むか!僕を愚弄するつもりか!僕はただただリラのためだけに!お前もあのライラと同じだな!リラをいつも苦しめるのはお前たちみたいな悪女だ!」


「あらまぁ。そうなんですか。けれどとても貴重なお話でしたわ。この国は『他国との約束を守らない』国なのですね。

 これは我が国に知らせておかないといけませんわね。こ・ん・な・に・簡・単・な・私・と・の・結・婚・の・条・件・ですら、破るんですもの。もっと大事な協定ですら簡単に破ってしまいそうですわ。商談を始め、軍事同盟や、停戦協定も見直した方が良さそうですわね。


 クレメンデルがこの国との様々な協定を破棄することについて他国から問い合わせがあった時に、今の話をぽろりとこぼしてしまう人がいたらごめんなさいね。気をつける様には言うつもりだけど、ど・こ・に・で・も・口・の・軽・い・考・え・な・し・の・愚・か・者・がいるものですから。


 ねぇ、ロングストーン宰相、陛下、妃殿下。」


 私が噛み砕いてあげて初めて、ディラックは自分の失言に気づいた様で真っ青になる。


 また、テティが呼んできただろう、宰相と国王夫妻も真っ青な顔で棒立ちしていた。


「いや、あのこれは...、違うんです、レティシア姫。」


 愚かにも焦って誤魔化そうとする国王。この親にしてこの子あり、さすがはアレンの父親ね。


「何がどう違うのでしょうか?陛下。私は彼に何度も『約・束・を・守・る・必・要・は・な・い・と言ってますわよ』と伝えたのに彼は何度も頷きましてよ?」


 私がそう言うと、宰相が真っ青な顔で私の前に平伏した。その声は涙に濡れている。


「どうぞ、どうぞお許しを。その様な話が出てはこの国は立ち行きません。私と息子の命を捧げます。どうか、ここだけの話にしていただけないでしょうか?」


「そうね、この話が他国に流出したらこの国は終わりね。

 けれど、どうして私が気にしてあげる必要があるのかしら?

 全てこの国の自業自得だわ。」


 私の言葉に真っ青になった国王まで、私の足元に額ずいて許しを乞うてくる。


「そうですわね、今回だけなら見逃してあげましょう。

 けれどロングストーン卿、あなただけは許しません。私があなたの無礼を何度も見逃してあげたのをいいことに、よくもまぁ、ライラを呼び捨てにし、その上で悪女と言ってくれましたわね。

 宰相、陛下、この国はライラの名誉を回復させたのではないのですか?!先日から私の目の前で事もあろうに次代を担うべきだった者の口からずっと、彼女に対する謝罪どころか、非礼しか聞いておりません。」


「いえ、きちんと名誉は回復しております。公爵家にも慰謝料を支払い、新聞にも載せております。」


 慌てた様に口にする宰相に私はにっこりと微笑んで告げる。


「そうですか、それではこの愚か者たちの口から出る言葉はなんでしょうね?全くため息しか出てきませんわ。

 宰相、あなたは国のためにも死ぬことを許しません。そのうえで今、私の目の前にいる愚か者のあなたの息子をどうするか、あなたが刑を決めなさい。」


 私の言葉に宰相はごくりと唾を飲み込むと震える声で告げた。


「王族に対する不敬罪、国家に対する背信行為、またエルムント嬢に関しての行いも鑑みて、死刑が妥当かと、存じます。

 親心としては毒杯を授けたいところですが、公開処刑にすべきでしょう。」


「えぇ、そうですわね。宰相、どうやら貴方はきちんと政治のできる方のようです。安心しましたわ。

 よろしいでしょう、本来なら公開処刑にするところですが、宰相、貴方に免じて毒杯を授けることを許可します。できるだけ苦しまず眠る様にいける毒を私が手配します。

 あぁ、もちろん、私もその場に立ち会いますわ。許可はくださいますわね?」


 私の言葉に宰相は青くなった顔を深々と下げた。


 そうして私は王妃様の近くに行くと他の誰にも聞こえない様に小さくアドバイスをした。


「王妃様。陛下の信用の出来なさはお分かりでしょう?陛下の公娼をお調べなさいませ。きっと驚く様な事実がわかりましてよ?」


 私の言葉に王妃様は何度も頷いた。

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